白と黒の果てに

目の前の机の上にある2つの薬。

真っ白なカプセルと真っ黒な粒。

2つの薬はあることを話していた。

ゆるい白T
- 1 -

「おい、黒。お前は人間様にとって毒だ。絶対に目立つような事をするなよ。」

「いいや白、お前こそ猛毒だ。ここはおとなしく俺が食べられるのを見ているんだな。」

どうやら、互いに自分がどんな薬なのかを知らないようだ。

虚木 幽
- 2 -

私は、どちらかの薬を飲まなければならない。

だから聞こうとした。

「私は貴方がたのどちらを飲めばいいのかしら?」

と。

ライト
- 3 -

真っ黒な粒の語りて曰く、

俺はあんたの背中押す、黒いココロの手伝い人。

俺を一粒食べたなら、ココロの明度がストンと下がる。

綺麗な正義に目を取られ、踏ん切り付かないあんたの為に。

俺はあんたの背中押す。

ココロのどこかにチョコンと居座り、決断の刻にそっと囁く。

ズルや妥協を躊躇うな。

正解や美徳を呑み込むな。

隣の白は猛毒さ、食べるのならば俺にしな。

と。

中々に毒々しい。

歴生
- 4 -

対して真っ白な粒は嗤って云う。

黒のいうことは、詭弁だ。たいていこういう輩は知識はあるが、知恵はない。
それに、黒くなったらもう何色にも染まれない。ココロの明度がストンと下がるのはそういうことだ。対して白はどうさ?
何色にだって染まれる。可能性は無限大だ。

だから、誠実に諦めちゃいけない。

隣の黒こそ猛毒だ。それも、治ることは決してない猛毒だ。

と。

実に妙薬の如き返しだ。

にゃーお
- 5 -

「だったら両方飲んだらどうなるのかしら?」

黒い薬も白い薬も答えることはたった一つ

知らない
今までの人はどちらか一方を選んでいた
だから俺達にもどうなるかわからない
それに俺達が知っているのは
俺達の効能だけで
俺達のどちらかを飲んだ人がどうなって
どういう結末を迎えたか
知るすべが俺達にはないから

「それじゃあ…。もう少し考えてみようかしら。貴方がたと私、どちらも幸福になる方法を」

B.M.V.
- 6 -

そんな時間はないんじゃないか?
黒と白は声を揃える。

「あんたも分かっているだろう」

そう。自分以外に幸せにすべき存在がある。いつまでも狭間で揺られている訳にはいかない。
今までそうしてきてどれだけ周囲を哀しませたか。

人は白でも黒でもなく灰でいいと言う。
それが人間というものだ、と。
だけど私はこのままでは人ですらなくなってしまう。

「それで、どうする?」

もう争わない声が重なり問う。

ノナ♢すすきののなく
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「…白も黒もはっきりできなくて、灰でもいられないなら、どちらも選ばなければいいのかしらね」

白と黒は咄嗟に息を呑む。

「おいおい、それじゃあ正義も知恵も全て捨てるっていうのかい?」

「それならまだ灰色の方がマシじゃないか!」

白が、黒が、声を上げた。

でも気づいてしまったのだ。

今のまま白と黒が混ざり続けて人であり続けることができないのなら、どちらも捨てて透明になったらいいのだと。

yoruya
- 8 -

私は徐に白のカプセルを取り上げた。

「お、おい!」
「そうそう、そうやって俺の方を…えっ?」

私は小さなカプセルを両手で捻ると、中の粉薬を紙の上に取り出し、元の状態に戻した。
「私には白も黒もいらない。必要なのは、この透明な薬なの」

すると黒の塊の白い粉が笑いと落胆の声を上げた。
「ハッ、こりゃ傑作だ!」
「やれやれ、飲めば楽になれるのに…」

私は微笑みながら、空のカプセルを飲み込んだ。

hyper
- 完 -

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