痛覚の記録

ぐらぐらと揺れてそのユーフォーは墜落する。
地上に着く前に、空気摩擦で真っ赤に燃えたユーフォーは空中でばらばらになってその機体に付いていた物質と共に霧散した。

その数年後、地上のあらゆる所で植物が異常繁殖するようになった。

竹原ヒロ
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それはもっとゆっくりと成長するはずだった。しかし墜落の際に発生した熱が種子の発芽を早めた。

哲学する種。それを運んできた者たちはそう呼んでいた。種子のうちに自律移動をし生態系を学び、ありとあらゆる地に適合する。飢える者には食べるに好ましい実を、傲れる者には毒の棘をさしだす。

未開の星を、住みよくする希望の植物だった。

本来ならば。

ああ、学ぶ時間のなかった、生まれたての哲学者。

オクラマン
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本来ならばゆっくりと、種のままこの星について学ぶはずだった。しかし、想定外に早く発芽してしまい、学ぶ時間がなかった。

予習をしそこなった彼らがはじめにしたことは、食事だった。

近くにあるものを体内に取り込む事で、外界の情報を得ようとしたのだ。
彼らは手当たり次第に食事をした。すべてを丸呑みした。

彼らは気付かなかった。
この星の文明を作ろうとしている生物まで飲み込んでしまったことに。

佐久間
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その生物に成り代わり、彼らは繁栄した。
思考する文明。その名の通り彼らは哲学者だった。

種を製作した科学者には予測し得ただろうか?
だが、現状を把握しその状況における最善の行動を導き出すことは、彼らに与えられたプログラムだった。

なぜ、我々はここにいるのか。
我々は何を為さねばならないのか、また何を為し得るのか。

彼らの成長は凄まじい速度で行われた。そしてついに、星の限界をも超え。

Utubo
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宇宙へと、その枝葉を伸ばしたのだ。

宇宙空間に出たにも関わらず、枯れる事はなかった。その強欲なる学習能力が惑星生物の枠を簡単に超えてしまったのだろう。

母星から飛び出した彼らは、その星の月である衛星を手中にして、この後の進路をどこに向けるべきか考えた。
「広すぎる!」
宇宙空間を初めて体感して驚愕しながらも、目標を見つけた。

自分達を成長させたエネルギーの源の光「恒星」へ向かう事にしたのだ。

ぷにぷにヒロ坊
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いくら、彼らが惑星生物の枠を越えようと、ガス体の天体である恒星に降り立つことはできない。
強すぎるエネルギーに近づくことで、彼らは身を焦がした。
燃え残って散らばった破片は宇宙空間の深い闇の中にさまようことになった。

彼らは哲学をする。
我々はどうして失敗してしまったのであろうか。もしや、傲慢を抱いていたのは我々の方ではなかったか。

星に残った彼らは互いを毒の棘で刺し合った。

aoto'
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痛い。初めて知った、あの星の幾つかの種が発した「悲鳴」の意味。正解は「声帯を振動させることで生み出される騒音」ではなかったのだ。「痛い、まだ死にたくない」──それは生命としてもっと早くに知っておくべき感覚だった。
「我、誤てり」
刺されながら、刺しながら、哲学する彼は叫んだ。
「我ら、誤てり」
彼らは震えながら、彼らを創造した科学者を探し始めた。

教えて下さい、父よ、母よ。僕らは、間違いました。

ちょもらんま
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科学者を探し始めてから数ヶ月が経った。
未だに科学者の行方は掴めていなかった。

そこで彼らは自分たちの生態を利用してもう一度
文明を築くことのできる生物を誕生させようと考えた。
もちろん簡単なことではないし気の遠くなるような時間が必要だ。
それに自分たちが長く生きるために進化する必要もあった。
けれども彼らは自分たちの過ちを償う方法はこれしかないと思った。

管理人
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彼らは試行錯誤を繰り返した。抗えぬ衰退に喘いだ。それでも、贖罪のために。

やがて生まれた、小さな赤子。無垢で弱い、しかし痛みを備えた生命体。かつてこの星で文明を築かんとしていた、あの生物を。

生を受けた瞬間、赤子は大音声をあげて泣く。この世界に生まれた痛みを歌う。彼らはその生命体に、「ヒト」の名を与えた。生まれながらの哲学者。そして、痛みを知る生命体。

「こんにちは。小さな哲学者よ」

遠雷
- 完 -

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