地の星、天の星

宝石を溶かして、型に流し込む。
真紅の宝石で埋まった型に星のかけらを投げ入れてみる。だめだ。星は嫌いらしい。投げ返された。
次は柔らかい新緑で埋まる型に落とし込んでみる。そっと返された。一体何が不満なの。

真紅の型に人魚の涙を落とせばあら不思議。満足気に固まった。
新緑の型に破れた若い恋の絵を押し込んだらあら、やっぱり満足気に固まった。

このかけらの何がダメなのかしら。こんなにも綺麗なのに。

ななし
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宝石の機嫌をとるのには数年かかってやっとコツを得たけれど、このかけらを受け入れてくれるものは何年経っても見つからない。

星のかけらを小瓶に戻して、ポケットに滑り込ませた。材料が少なくなってきたから、また探しに行かなくちゃ。空の瓶を鞄に詰める。
鞄の革は夜闇の切れ端。パチンと月光色の留め金を嵌める。

空に焦がれてこの職に就いたのに、星を扱えないだなんて。

絢水
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調達のために市場へ行くと、星獲りのおじさんが私を見て、もの悲しそうに微笑んだ。

「昔は星玉職人といえば花形の職業だったけどねぇ」

この街も寂れたものだ。
かつては、星を溶かして型に嵌めた「星玉」の名産地として繁栄した。今では星の人気がなくなり、宝石が代替品。

一番星と、流れ星をひとかけら。瓶いっぱいに詰めても、たった銀貨2枚で買えてしまう。
星が安価になるにつれ、宝石はどんどん傲慢になる。

kam
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そんな宝石達の扱いづらさが増している事を、星獲りのおじさんにひとしきり愚痴るとおじさんは最近の星獲り事情を愚痴るのだった。
いつもの習慣と言えばいつもの習慣なのだが、その深刻さは回数を重ねるごとに深くなっている気がする。
「星達が星玉になれない事を知ってて、出来の良い部位を不用意には私等に見せなくなってきてるんだよ」
だからこんな物しかないんだと続けて陳列台に手を振った。
私は陳列品に目を移す。

ぷにぷにヒロ坊
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砂浜色の星砂のプールが広がるだけの光景に愕然とした。辛うじて目を凝らすと、凝結した赤星があった。それでも小爪程の大きさ。この前訪れた時よりも確実に凝結星が小さく、少なくなっている。

「まあ星砂も星ではあるからな……おっと、余計なことは聞かせまい」
コイツらにまでヘソを曲げられると商売上がったりだと愚痴りながらおじさんは星砂をシャーレで掬い混ぜる。その優しい手つきに見惚れ、珍しく星砂を多めに買う。

ユリア
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冷たく輝く青星に、煌々と光る赤星、眩くきらめく銀星や、爛々と照る金星。瓶はいっぱいになった。
宝石の派手さや街の灯りにおされ、星たちの輝きは、少しずつ失われている。その輝きを取り戻させてあげられるのは、星玉だけ。だから私は、星玉を自分の手で作りたい。
「おじさん、ありがとう」
「はいよ、まいどあり」
私は小瓶を受け取って、鞄の中にしまった。そして、ふと思いつく。
星で作った型ならば、もしかして。

遠雷
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型を作れるほど、大きな星があるだろうか。
星市場で目星いものを探すが、中々見つからない。星は着実に私たちから離れていっているような気がした。

「いや、先に離れたのは私たちの方か」

星玉は本来、星を溶かして型に流し込む。
そこに核となる宝石を入れる。
しかし今はそれができない。
星の代わりに宝石を溶かし込み、核を入れる。

やはり星玉は作れないのかもしれない。

「弱気になるな私。今は型だ。」

伊月 雨
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改めて先程購入してきたばかりの星砂たちを見つめる。耳元で瓶を優しく揺すると、ちりちり愛らしい音で啼いた。見上げた空が、遠い。

銀河の星屑。昔は夢中になって買ってもらったスコップで集めたっけ。あれは6つの誕生日だった。ちびの私には大仕事だった。父さんは「ご褒美だよ」とその場で獲った碧星をブローチにしてくれた。私の星屑を散りばめたブローチ。6歳の子が着けるには、大人びていた。
宝箱にしまったままだ。

113
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あの頃は星も宝石も気にせず、綺麗なものなら何でも愛した。だから小さな紅玉も並んで宝箱にある。
きっと扱えるか扱えないかではないんだ。どれが上か下かということでもなく。
私は星砂を夜露で湿らせて型にした。碧星を溶かして流し込む。紅玉も溶かして加えた。
幾多の色が弾き合う。
でも、その中に星のかけらを入れると。

私は微笑んだ。深紫の星玉が目の前にあった。全て溶け合い交じり合う至高の輝きを放ちながら。

ヒイラギ
- 完 -

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