黄金の国

昔むかし、この場所に、貧しい国があった。痩せた土地で、雨の降らない国だった。飢饉と疫病、内乱。隣国の侵攻。膨らんだ借金。
哀れに思った神様はその国に黄金のつくり方を教えた。人々は喜んで金をつくり、貧しかった国はみるみる豊かになった。
けれど、裕福や権力は人を変えるのか、信仰心に厚かった国民は、祈りを忘れて自身や家を飾り立てることに躍起になった。
やがて、国全体を黄金が覆ったとき、神様はこう仰った。

オム飯
- 1 -

「与えるだけではこうなってしまうのか…、いずれこの国を変えられる者が現れるだろう。豊かさに甘んじた罰じゃ。」
神様がひとつ息を吹きかけると、金は石ころになった。
神様がふたつ息を吹きかけると、人々は豚になった。
神様がみっつ息を吹きかけると、豊かな田畑は泥沼になった。
隣国からの貿易は途絶え、地図からも消え失せそうな国となった。
そんなある日、旅人が近くを通りかかった。

317
- 2 -

旅人は、黄金の国があると聞いてやって来たのだった。しかし、どうやら嘘だったらしい。緑は芽吹かず、命は宿らず、死んだ土地がどこまでも広がるばかり。

旅人は憐れに思った。
飢えた豚たちが雑草を奪い合う光景が広がっていたのだ。
彼は、隣国から持ってきた花の種を蒔いた。どんな不毛の土地でも育つ特別な種だ。
旅人が去った後、やがてそこには一面の花畑ができていた。花は、まるで涙を流したような青い実をつけた。

kam
- 3 -

飢えた豚たちは我先にと青い実を食んだ。ひとつぶ呑むと、豚の目からはらはらと涙が零れた。
豚の腹に蘇る苦しみ、悲しみ。毒のように巡ってゆく。
多くの豚が、その実を食べるのをやめてしまった。食べ物はどんどん減ってゆく。辺り一面、青い実のなる花ばかり。

数匹の豚が、また実に近づく。
これを食べて流した涙に、なにか懐かしいものを感じた。辛い思いをするけれど、恐る恐る、もうひとつぶ。

絢水
- 4 -

すると突然、実を食べた一匹の豚が泥沼に脚を深く入れ、真っ直ぐに進み始めた。

彼は、ただひたすら水中を引き摺る様に歩いている。
沼の端まで行くと、折り返してまた歩く。
一言も発する事なく、何度も何度も繰り返す。
爪が剥がれようが、皮が剥けようが、彼は進み続ける。
他の豚達は、最初彼が何をしているのか全く理解出来ずにいたが、少しずつ彼の行動が解ってきた。

なんと、彼の歩いた跡には畝が出来たのだ。

hyper
- 5 -

一匹の豚の示した畝に従って、多くの豚たちが我も我もと泥沼に足を踏み入れる。踏みならされた泥沼が、命芽吹かぬ大地が豊かな土壌へと変わっていく。歩くのに疲れると、豚たちは青い実を口にし、涙を流す。悲哀を嘆く豚たちの慟哭はかつての国跡に寂しく響いた。

豊かな土壌にミミズが生まれ、鳥が集まり、花の種が飛んでくる。花は虫を呼び、虫は花の蜜を振りまいた。かつて黄金が死をもたらした命が回り始めた。

aoto'
- 6 -

そして各地でそれぞれの実りの結果を生み出していった。
ある所では花々が咲き、また別の所では果実が実を付けた。
やがて、季節や光の具合によっては黄金色に輝く稲穂が風にそよぐ姿を見かけるようにもなった。

豚たちは自然の豊かさに驚くようになり、それと共に賢くもなっていった。
鳴き声で己れの思いを他者に伝える手段も覚え、身綺麗にする方法も身につけた。

そんなある日、ある小さな豚が天を仰ぐようになった。

ぷにぷにヒロ坊
- 7 -

その豚の意図を知った他の豚もまた、同じように天を仰ぐ。その思いは一つだけ。

──祈りと感謝を忘れ、欲に溺れたことをお詫びします。

神様は豚たちの声をしっかり聞いていた。そうして豚たちに届かない独り言を漏らす。
「旅人に感謝するのじゃ。彼は私のかつての友。今は下界に降り、世界を見て回っている」
旅人のおかげで彼らは再起を果たそうとしている。神様は再び己の力を振るか迷った。
やがて神様は仰った。

Joi
- 8 -

「悔い改めたお前達には、人間の身体を与えよう。だが、私が与えるのはそれだけじゃ。」
神様がひとつ息を吹きかけると、人々は人間の姿になった。
豚であった人々は、お互いの顔を見合わせ、神様に感謝した。

そうして何十年かの時が流れたある日。
旅人が久しぶりにこの国にやってきた。
「大分黄金の国という名に相応しい国になったんじゃないかな?」
国一体を見渡すと、収穫前の稲穂が目の前いっぱいに広がっていた。

なるばなな
- 完 -

novelnoveは
9人でひとつの
ストーリーを完成させる
参加型小説アプリです。