プレゼンチャレンジャー

「今、何て言った…?」
「えっと、俺英語できないんで、日本語でまとめていいですか?」

あまりのことに愕然とする。

「…何でプレゼン相手が日本語分からないのに日本語でスライド作るの?」
「いや、英語ほんとに苦手で…ちょっと期限的にも余裕無いんで…」
そう言って入社1年目の後輩は去って行った。

一瞬、思考回路が停止する。
そして、思考が爆発した。

雨音雅詩
- 1 -

「え、ねぇねぇ、君それ作って何する気なのだって相手日本語わかんないからねきっと説明も英語のつもりでしょうダメだよそれなんのためにやるの」

一息に言い切って肩で息をする俺に、後輩はキョトンとした顔をした後、ゲンナリした顔で去っていった。

後で辞表を提出したと聞いた。

アホかと思った。

Dangerous
- 2 -

それが5年前の事。
そして──

「先輩、俺やっぱ英語でプレゼンとか無理そうです」
ニカっと笑ってる後輩、これが現在。

「そう。でも相手は英語しか分からないよ」
「あ、英語が無理でもプレゼンはしますから!」
「日本語は全く通じないよ?」
「大丈夫です!任せてください!」

いやあのね〜。しかし私が何と言おうと、彼は何とかなるの一点張りで行ってしまった。

うーん。意欲があるのは認めるけどね〜。

ユリア
- 3 -

だが、彼が一歩も引く様子が無いので、私はその情熱に負け、仕方なくプレゼンを認める事にした。
ま、最悪どうしようもなくなったら、私がフォローするか…。

そして、プレゼン当日。
相手先企業の会議室に通されると、ここは日本じゃないのかと思える位、多くのアメリカ人が座っていた。

私達は前に立つと、
『それでは弊社の商品について、彼から説明させて頂きます』
私が英語で説明し、後輩に振った。

hyper
- 4 -

おそらく私以上に緊張しているのだろう後輩の顔は、それでもどこか自信を感じさせる、というよりも期待に満ち溢れたような目をしていた。

大きく息を吸って。
ゆっくり吐いて。

そんな様子に訝しげな顔をされているにも関わらず後輩は気にも止めない。

不安になって後輩が徹夜したというパワーポイントの画面に目をやり、

「え」

ぎょっとした。

ノーネーム
- 5 -

カウントダウンが始まっていた。
そう、まるで映画が始まるが如く。

ブー

ブザーの音が響いて、映像が映し出される。
優しい音楽と、仲睦まじい母子の絵がパラパラ漫画の様に動き出す。
その子が嬉しそうに母親に差し出しているのは、うちの新商品の車の模型。

決して上手いとは言えない絵。
台詞もなくて分かりにくい話。

だけどそこにいる全員が、その映像に釘付けになっていた。

asari
- 6 -

『素晴らしい! とてもユニークなプレゼンだったよ!』

後輩のプレゼンが終わると、先方の重役達が一斉に拍手した。皆一様に絶賛し、
顔をほころばせている。

『ぜひうちと取引させてほしい!』
『は、はぁ。ありがとうございます』

そこから話はとんとん拍子に進み、その日のうちに商談はまとまった。
必死に俺が交渉している間、後輩はヘラヘラ笑うばかりだった。

この商談以来、後輩は頭角を現す。

ぱっちん
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その後も彼はそのユニークさと多様なアイデアで数々の商社の経営陣を魅了し、次々と大手企業と契約を結んでいった。

トントンとスピード出世していき、ついに営業部長にまで上り詰めた。俺は営業一課の課長。自分の後輩だったやつが、この前までヘラヘラ笑ってた英語もできないやつが、上になった。

月雫
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心の底から納得は出来ないが、心の半分は納得 (というかあきらめだろうが) している。
結局はアイデアマンが勝つのだ。
英語が出来るとか出来ないなどという細かい事は関係がなかったんだ。
要するに、自分の前に回ってきたチャンスを手にする運命を握れるかどうかなのだ。
以前の辞表野郎も俺も、その点で紛れも無く敗者なのである。
俺も辞表を書こうかと思ったがやめた。
俺にもチャンスが来るかもしれないのだから。

ぷにぷにヒロ坊
- 完 -

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